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Can't Stop Fall in Love【番外編】

ジュリアに傷心《ハートブレイク》

 ←兄の憂鬱 →腹黒王子の失恋
 総務部の一大イベントであるパーティーを終え、長谷部くんとの偶然の再会やら輝翔さんと金髪美女との浮気?騒動を乗り越えた後日。噂の金髪美女ジュリアさんが本国フランスへ帰国する日となり、私と輝翔さんは見送りを兼ねて空港へと出掛けることになった。
 というのも、彼女が幼なじみである輝翔さんの恋人=私に、ぜひ会って話がしたいと希望したからである。

 「心配しなくてもいいから。」

 輝翔さんの運転で空港へと向かいながら、明らかに緊張している私に対して輝翔さんは優しく声をかけてくれるけれど、もちろんそんな言葉は信用しない。……お母様の例があるからね。
 それに、どうしてジュリアさんが私に会いたがっているのかだって、容易に想像できる。
 待ち構える修羅場に対して、臨戦態勢は整えておかねばならないのです。

 空港に到着すると、彼女はVIPラウンジのソファに座っていた。
 「綺麗……。」
 その姿に、思わず見とれた。
 腰まで伸びた金色の髪に、透き通るような白い肌。柔らかな光に包まれて優雅に紅茶を飲む様は、まるで絵画を切り取ったような美しさだった。
 「Salut, Julia」
 近づいてくる気配に顔を上げたジュリアさんに、輝翔さんは微笑みながら良い声で挨拶する。
 「Salut, Akito 」
 彼女も、輝翔さん以上の笑顔で応える。明るい日差しの中で笑顔を交わす美男美女のカップルに、周囲から溜め息が漏れるのがわかった。いやいや、ここで怯んでは女が廃るぞ。
 「ボ、ボンジュール……」
 思わず赤面するような発音で挨拶した私に目を向けたジュリアさんは、一瞬真顔になって視線を留めると、すぐに輝くような笑顔を見せた。
 「こんにちは、美月さん」
 ───へ?日本語?

 唖然とする私を置いて、ジュリアさんは輝翔さんに向かって話しかける。
 「輝翔、少し美月とふたりきりで話したいの。いいかしら?」
 心臓がひとつ、大きく鳴った。ほぼ初対面の彼女からふたりきりでの面会を申し込まれたということは……やはり、そういうことだろう。
 「……二人で?」
 私の気持ちを察した輝翔さんの表情も俄かに曇る。あからさまに警戒する様子を見たジュリアさんは、面白そうに笑っていた。
 「大丈夫よ、いじめたりしないから。美月、行きましょ。」
 立ち上がった彼女は私の手を引くと、ラウンジを離れ個室へと向かった。
 ……どうも最近、連れ去られ癖がついているようだ。
 振り返った先で輝翔さんが心配そうにしていたけど、まあ、なんとかなるだろう。

 「そちらにどうぞ。今、お茶を頼むから。」
 ジュリアさんは窓辺の応接ソファに私を促すと、ルームサービスの電話を掛ける。流暢な日本語で紅茶を2つ頼むと、彼女も私の向かいの席へと腰を下ろした。
 「───日本語、お上手ですね。」
 「ありがとう。うちは昔から須崎の家と関わりが合って、子供の頃からしょっちゅう輝翔たちも遊びに来ていたの。輝翔もフランス語を勉強していたけど、私も彼ともっと親密になりたくて、必死に勉強したのよ。」
 ジュリアさんのサファイア・ブルーの瞳が挑発的に輝いた。
 ……つまり、輝翔さんのために、日本語を勉強したというわけですね。
 「でも、昨日は喋れないって言ってましたよね?」
 パーティーの席では、日本語の喋れない彼女のために、輝翔さんが傍らでずっと通訳をしていた。その姿は、私の劣等感をひどく刺激するものだった。日本語が話せるのであれば、わざわざあんなことはしなくてもよかったはず。彼女の返答は逆に私の首を絞めるものになるかもしれないけれど、どうしても聞いておきたかった。
 なのにジュリアさんは、質問の意図を知ってか知らずか、余裕の表情を崩さない。
 「日本語のすべてが理解できないと、お客様に失礼でしょう?……中途半端に通訳を着けるよりは、輝翔に頼みたいって私が言ったの。」
 ……それはそうかもしれない、のか?私と会話する彼女からは、言葉の不自由さは全く持って感じられない。納得できずにモヤモヤしていると、個室のドアがノックされて彼女が注文した紅茶が2つ運ばれてきた。給仕してくれたウェイトレスさんに流暢な日本語でお礼を言い、柔らかな金髪を耳に掛けると優雅な仕草でカップを口に運んだ。
 紅茶を一口飲み、軽く息を吐く。伏せていた碧眼が私に向けられ、薄桃色の唇が静かに開いた。

 「単刀直入に言うわ。輝翔を私にくれない?」

 ───きたっ!!
 予想通りの彼女の言葉に、覚悟はしていても心臓がドクリと音を立てる。
 だけど、私ももう今までの自分とは違う。瞳を閉じて軽く深呼吸をすると、輝翔さんの顔を思い出す。
 それだけで、不思議と気持ちが落ち着いた。

 「輝翔さんはものではありません。例え私が許可しても、輝翔さんが望まなければ意味のないことですよ。」

 自分でも驚くぐらい、はっきりとした口調だった。余裕の表情だったジュリアさんの顔が初めて強張る。それが逆に私に冷静さをくれて、さらに畳みかけた。

 「それに……私も、輝翔さんと別れるつもりはありません。」

 同じような言葉を輝翔さんのお母様に言われた時、私は何も言い返すことができなかった。
 それは、私が自分に自信がないから。確かに今も、その気持ちに変わりはない。目の前に対峙する金髪美女の方が、輝翔さんにお似合いなことぐらいわかっている。

 だけど、輝翔さんは私を選んでくれた。一緒にいると安心すると言ってくれた。
こんな私でも、輝翔さんがは必要としてくれる。それが、私に勇気をくれる。

 ───輝翔さんは、太陽みたいな人だから。

 「苦労するわよ?」
 ジュリアさんは、最後通告とでもいうように私の意思を確認する。
 「その時は……輝翔さんに、頼ります。」
 考えてみれば、セレブな世界で私が苦労することぐらい、輝翔さんはお見通しだろう。だったら、困った時は迷わずに頼ればいい。
 輝翔さんならきっと、私を導いてくれる。なにしろ、シンデレラの階段を引きずり上げるような人、なんだし……。
 「わかったわ。」
 諦めたように溜め息を吐き、彼女はバッグからスマホを取り出した。そして電話の相手にフランス語で流れるように話し始める。やがて電話を切ると、楽しそうに笑っていた。
 いや、文字通り、声を上げて笑ったのだ。ふふふっ、と。その笑顔が黒いものに見えたのは、なぜだろうか…。
 「あの……ジュリアさん?」
 なんとも言えない不安に襲われていると、ジュリアさんはドアの外を見て今度は大きく肩で溜め息を吐いた。
 「───美月は呆れるほど輝翔に愛されているのね。」
 促された先では、ドアの横に立っている輝翔さんの後ろ姿があった。
 正面は避けているものの、擦りガラス越しに背中が写っている。わかりやすく聞き耳を立てているわけではないが、おそらく中の様子を伺っているのだろう。
 ジュリアさんが立ち上がり、ドアを開けて、輝翔さんを部屋の中へと引きずり込んだ。

 「ねえ、美月。本当にこんな束縛男でいいの?こいつはね、美月にヤキモチ焼かせたくて、わざと私にフランス語だけで喋る様に強要したり、わざわざ腕を組ませて美月に会いに行ったりする奴なのよ?」

 ───な、なんですと!?
 「バカっ、ジュリア……言うなって言ったのに!!」
 ジュリアさんの言葉に、輝翔さんは狼狽している。
 つまり……。あれもこれも、すべてあなたの仕業だったというわけですね……?

 「なんで、そんなことしたんですか?」
 「だって。美月、なかなか好きだって言ってくれねぇもん。」

 赤くなって顔を背けた輝翔さんに、絶句するしかなかった。ジュリアさんは苦笑いをしながら私に近づくと、そっと耳打ちする。
 「本当にいいの?苦労するわよ?」
 ───苦労するって、こっちのことなのね。

 まあ、輝翔さんが嫉妬深くて独占欲も強い腹黒王子であることは、すでに私のなかでは周知の事実であるからね。
 それに、ヤキモチを焼かせてまで確認したかったということは、それだけ私のことを想ってくれている証拠だと思えば、嬉しくないこともない。
 果たしてそれで片づけていいのかはわからないけれど、堂々と宣言した手前、今はそうやって自分を納得させるしかない。ただ、さすがにはっきりと返事はできなくて、私は黙って頷いた。
 すると、耳元にあったジュリアさんの顔が近づいてきたかと思うと───。

 「───んんっ!?」

 薄桃色の唇が私の唇に覆いかぶさり、私は言葉を失った。
 ふっくらと柔らかな感触が離れると、舌で唇をぺろりと舐め上げられた。

 「───輝翔に懲りたら、いつでもいらっしゃい。」

 ジュリアさんは妖艶にほほ笑むと、私の頬にもキスをした。
 「ジュリア、てめぇ!!なんにもしないって言ったじゃねぇか!!」
 放心した私を抱きかかえ、輝翔さんはハンカチで乱暴に唇を拭く。白いハンカチには、私のものとは違うルージュの跡がしっかりと残っていた。
 「いじめたりしないって言っただけよ。あ、ちょっとだけいじめたわね。美月、私が日本語を勉強したのは自分の趣味のためよ。こんな腹黒い男、美月がくれるって言ってもいらないわ。」
 「え……。じゃあ、さっきのは?」
 「あなたの覚悟を試しただけ。輝翔の重たい愛を受け入れるなら、私の愛も受け入れてもらえるかと思ったの。脚立の上の美月は、可愛かったわ。」
 ジュリアさんがウフフと笑うと、輝翔さんが私を抱き締める力が強くなった。また、ヤキモチ焼いてるの!?
 「じゃあ、そろそろ時間だし、私は行くわね。また会いましょう。」
 「さっさと帰れ!!当分来るな!!」
 悪態をつく輝翔さんをひと睨みしてから私に投げキッスすると、ジュリアさんはひらひらと手を振り颯爽と去って行った。
 彼女が手にしたピンク色のキャリーバッグには、ジャパニメーションの美少女キャラのステッカーが、ドーンと貼られていた……。

 未だに残る甘い香りが、私の思考を鈍くする。
 取り残された私は、輝翔さんに説明を求めた。
 「……あの、輝翔さん?」
 「だから、ジュリアとはなんでもないって言ったろ。あいつは、真性のレズビアンなんだ。」

 ───マジで!?

*****

 さらに後日。私はお母様によって輝翔さんの秘書になるべく異動させられたのだが。

 「ジュリアも、美月ちゃんを輝翔の秘書にする話をしたら、大賛成だって電話してきたのよ~。美月ちゃんの秘書コス姿が見たいんですって。やっぱり美月ちゃんは、みんなに気に入られる子なのね!!」

 歌うように話すお母様に対して、私がうな垂れていたのは言うまでもない……。

 ───ジュリアさん、あなたも立派な腹黒です。
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