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Can't Stop Fall in Love【番外編】

美月と忘年会③

 ←美月と忘年会② →十一年目の誕生日
 「しっかし、気に入った女の子を強引に秘書にしちゃうなんて、専務もなかなかやるわねぇ!」
 「腹黒御曹司なんて萌えるわぁ……。羽田野ちゃん、良かったわね!」
 ───ちっとも良かぁないわい!
 ようやく戻ったお座敷は、退席前よりも異様な盛り上がりを見せていた。いつまで経っても誰も助けに来てくれないと思っていたら、私が席を外している間に須崎商事の誇るスーパースターが現れたものだから、みんなそれどころではなかったらしい。
 「私たちも、すぐに羽田野ちゃんを呼びに行ったのよ?そしたら、あんなことになってて。慌てて助けに入ろうと思ったら、専務が、自分が行くから、私たちは戻って待っていて欲しいって言うものだから。ごめんね?」
 そう言って手を合わせる太田さんだけど、全然すまなさそうには見えない。さっきから顔はにやけっぱなしだし、いろいろ聞き出したくてうずうずしているのが見え見えだったりする。
 それもそのはず。私がいない間に、輝翔さんはここにも爆弾を投下していた。
 以下、太田さんと黒木さんに聞いた回想です。

 席に着いた輝翔さんは、課長たちへの挨拶も早々に、末席に座る太田さんと黒木さんの姿を見かけると近寄ってきたのだそうだ。
 「太田さんと黒木さんですね。いつもお話は伺っています。今回は突然の異動でお二人の貴重な後輩を引き抜いてしまって、大変申し訳ありませんでした。」
 そう言って頭を下げる輝翔さんに、二人は呆気にとられる。なんの接点もないはずの御曹司が、自分たちのことを認識し、突然後輩が異動になったことへの詫びを入れたのだから。
 そして突然のことながら、疑問をぶつけた。
 「あの、専務と羽田野ちゃ……さんは、どういったご関係なんでしょうか?」
 すると輝翔さんは頭を上げて、はにかみながらも堂々と言ったのだそうだ。
 「たいしたことはないですよ。長年片想いしていた相手です。」

 ───なんてことを言うんだ、あんたは……。
 御曹司の一挙一動に注目していた皆にはすぐに伝わり、こうして総務課の忘年会は、忘年会というよりむしろ、私の婚約披露宴のようになってしまったわけなのです。
 本当、戻ってきた直後の盛り上がりは、尋常じゃなかった……。
 次々お酌に来るし、冷やかされるし、居たたまれないことこの上ない。輝翔さんがうまく治めてくれたことでなんとか落ち着いたけれど、あのまま飲まされ続けたら、私は潰れていたに違いない。
 冷たいウーロン茶で心を静めている私の隣で、太田さんと黒木さんは興奮冷めやらぬ様子では悠然と焼酎を煽っていた。
 「良かったんじゃない?少なくともこれで、羽田野ちゃんが専務をたぶらかしたわけじゃないことは証明されたんだし。」
 「そうよね。専務が羽田野ちゃんにベタ惚れなことがわかった以上、そう簡単には手が出せなくなるからね。」
 それはそうだけど、私はそんなことは望んでいなかったんです!
 輝翔さんの発言により、私は『御曹司に見初められた挙げ句に囲われる形で異動した』シンデレラに認定された。確かにこれで、なんの実績もない新人がいきなり専務就きの秘書に抜擢されたのは専務を含む上層部の意向だということが明らかになった。輝翔さんのセリフの通り、異論があるならば矛先はそちらに向けろ、という形にはなったのだけれど……。
 「だからって、そんなことしたら、私が無駄に目立っちゃうじゃないですか。」
 「どうせもう目立ってたよ?」
 ───ぐはっ。黒木さん、容赦ないな……。
 まあ、異動が発表になった時点で、目立ってましたけどね。
 「とにかくこれで、謂れのない誹謗中傷も少しは収まると思うよ?」
 よかったね、とグラスを傾ける太田さんだけど、もう一度言おう。ちっとも良かぁないわい!
 「私は、このことに、あき……専務の力を借りるつもりはなかったんです。」
 円滑な社会人生活のために輝翔さんとの間柄や父のことを隠していたのもさることながら、今回の件に関しては、例え具体的な解決策は見つかっていなくとも、少なくとも自分の力でどうにかしたいと思っていた。
 毎日のように届く手紙やメール、先ほど受けた彼女たちからの抗議の言葉は、私自身も自覚していることだった。いくら輝翔さんやお母様が、輝翔さんに相応しい人間になどならなくてもいいと言ってくれても、世間はそれを許してくれない。ましてやこれから先、輝翔さんの秘書として一緒に仕事をするのであれば、求められるスキルがどれほどのものかは私もわかっている。そして、今の私が理想とする段階には程遠いことも。
 でもそれが正当な評価だと思う。容姿も能力も、今の私ではまるで足りない。贔屓目で見られることがなければ、私はただの新入社員の一人にしか過ぎない。優秀な人間が多く働く会社の中で、ただの社員が専務の傍で働くことにどれほどのリスクがあるのか、それを再認識するいい機会だった。だから、反論することもなく、受け入れようとした。
 「守ってもらうだけじゃ、ダメなんです。甘えていたらダメなんです。これくらい自分で解決できるようになりたかったんです。だから、今は、何を言われても、仕方がないんです。」
 今は、なにも反論できない。だけど、現実を知っているのと知らないのとでは、成長する速度も変わってくると思った。
 「すぐに認めてもらうことなんて、出来るはずがないんです。正直やっていける自信もないけど、自分の努力次第で、少しずつでも認めてもらうしかないと、そう、思っていたんです。」
 「───羽田野ちゃんは、大人になろうとしてたのね。」
 ぽんぽん、と頭に温かい感触が触れて、見上げると太田さんがやさしい眼差しで私を見つめていた。 
 「羽田野ちゃんの気持ちも、専務はわかっていたみたいだったよ。」
 太田さんは、さっき言わなかったけど、と前置きして、私がいない間に輝翔さんと交わした会話を教えてくれた。

 私と輝翔さんの関係を知った二人は、盛り上がる周囲をよそに、最近私に起きている嫌がらせの数々を申告したのだそうだ。平気そうなふりをしているけど、内心は傷ついていると思う。専務の力で、なんとかしてやって欲しい、と。
 「実際は、好きな女くらい守ってみせなさいよ、だったけどね?」
 黒木さんの横やりが入り、太田さんの顔が一瞬綻ぶ。
 ……続けます。二人に事情を聞いた輝翔さんの様子から、それが初見でないことはわかったらしい。輝翔さんは特に驚いた顔もしなかった代わりに、すまなさそうに笑ったのだそうだ。
 「自分の立場上、話せなかったんだと思います。でも、お二人の存在が、彼女の支えになっていました。承知の通り、彼女には親しい同期もいません。部署は変わってしまいますが、どうかこれから先も、彼女の力になってあげてください。」
 そう言って輝翔さんは、二人に対して頭を下げた。

 「特別視されたくない、っていう気持ちが一番わかるのは、多分専務自身なんじゃないかな?」
 黒木さんの一言で、ハッとした。確かに、生まれながらの御曹司、将来の社長、そういった目で見られ続けている輝翔さんなら、私の気持ちも少しは理解してくれていたのだろう。
 「それに、言いたくないことや話したくないことだってあるのはわかるけど、私たちだって、本当は、羽田野ちゃんの口から専務とのことを聞きたかったしね。」
 太田さんがクスリと笑いながら、どこか寂しそうに微笑んでいた。
 太田さんや黒木さんに、ずっと輝翔さんとのことを隠してきた私には後ろめたい気持ちがあった。絶対に守り通さないといけない秘密であったわけではない。だけど私は、二人を信用していないわけではないと言いながらも、噂が広まることを恐れて黙っていた。
 なのに輝翔さんは、私を守ってやってほしいと言う二人に、頭を下げてくれたんだ。
 「……ずっと黙っていて、すいませんでした。」
 太田さんと黒木さんに、改めて頭を下げた。
 「いいのよ。羽田野ちゃんの気持ちもわかるし。確かに、専務と付き合ってるなんて知られたら、大騒ぎになっちゃうものね。」
 さっきみたいに、と太田さんは笑う。
 「それに、薄々勘付いていたしね。だって羽田野ちゃん、やたらと専務絡みの仕事に呼ばれてたもんね。」
 黒木さんの洞察力、恐るべし。
 でも、本人の口から知らされるのと、他人の口から知らされるのとでは、やっぱり違う。
 ───輝翔さんも、そうだったのかな? 
 「専務も羽田野ちゃんの意思を尊重して、陰ながら見守るつもりだったんじゃないのかな?でも、実際に目の前で自分の想い人が女たちに囲まれてるのなんか見たら、黙っていられないわよね?」
 「むしろ、あそこで黙ってたら男が廃るわよね?」
 二人は、ねー、と声を合わせて同意した。
 輝翔さんが自分のプライドの問題と言ったのは、そういう理由だったのかも、しれない。
 「とにかく、特別視されることと仕事の邪魔になるような意地悪をされることは違うんだから。これからも何かあったら遠慮なく頼ってちょうだいね。」
 頼もしい先輩二人にそう言ってもらって、私は元気よく返事をした。
 そして、二人に頭を下げてまで私のことをお願いしてくれた輝翔さんにも、心から感謝する。 
 もう一人、輝翔さんに私の受けていた数々の嫌がらせをリークしていた人物がいた。
 それが、私の上司である、課長だった。輝翔さんは入社してから専務になるまでの3年間を総務課で過ごしていた。そしてその時の指導役が、現在の課長その人なのだ。なにより、今日のこの会に輝翔さんを招いたのは、課長だと言っていた。
 席に戻った私が恨みがましい目で課長にお酌をすると、彼は困ったような苦笑いを浮かべていた。
 「守ってやったらどうだと進言しただけだよ。まあ、君たちに恩を売って、出世したかっただけなんだけどね。」
 課長の顔は、慈愛に満ちていた。 
 陰ながら見守ろうと決めていたのに、他人から守ってやってほしいと言われたら、黙っているわけにはいかないよね。 
 輝翔さんの行動が果たして正解かどうかはわからないけど、その日の帰り道、ようやく私は輝翔さんにお礼を言った。

 翌日、輝翔さんの部屋に掃除機をかけていた私は、寝室の隅に放置されていた紙袋を発掘した。
 それはイヴに輝翔さんが持ち帰った大量のプレゼントの残骸たち。片付けられない輝翔さんは、こうやって部屋を汚部屋にしていくのね。仕方のない人、と心の中で奥さん然としながら折りたたんでいると、ひとつだけ、開けられることもなく放置されているプレゼントを発見した。
 「───なにやってるの?」
 「うわぁぁぁっ!」
 輝翔さんに声を掛けられた私は、手にしたプレゼントに鼻を近づけたまま叫び声を上げた。
 だって、気になったんだもん!
 ゆっくりと近づいてきた輝翔さんは、私の手からプレゼントの箱を取り上げると、そのまま床にポイと投げ捨てた。
 なんと、もったいない。なのにそんな不作法なことをしておきながら、輝翔さんは私に顔を近づけて、ニッコリしながら言い放った。
 「人のものに勝手に手を出したらどうなるか、いい機会だから美月にもきっちり教えておこうか?」
 「ひいぃ……っ」

 ───輝翔さんのものに手を出したら、げに恐ろしきことになる。
 
 もしかして、大人になろうとしていた私の邪魔をした本当の理由は、単にロリコン趣味な輝翔さんの性癖によるものだったんじゃないか、という疑問は、決して口にはしないけど。

 なにはともあれ。年末年始だけでなく、防犯にはくれぐれも気を付けましょうね。
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