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Can't Stop Fall in Love【番外編】

十一年目の誕生日

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 「美月、誕生日おめでとう」
 「ありがとうございます」
 ホテル高層階のレストランはキャンドルのやわらかい光に包まれ、全面ガラス張りの店内からは真っ黒なキャンバスに小さな光が無数に散らばっている。私の席の向かいでは、質の良いスーツに身を包んだ輝翔さんが柔らかな眼差しを私へと向けていた。

 一年前、輝翔さんが私に対する想いを伝えた思い出の場所で、付き合ってから初めて迎える誕生日を迎えた。

 「そういえば、ずっと気になっていたことがあるんですけど。輝翔さんって、その……かなり前から、私のこと、す……好きだったんですよね?」
 「うん、そうだよ」
 迷いなく口にされると、ますます照れますねぇ……
 「それにしては、今まで一度もお誕生日のお祝い的なことはなかったですよね?去年だって、忘れてたみたいだし……」
 一年前の誕生日は、私は家族と共にお祝いをした。輝翔さんから誕生日のお祝いをもらえるという話になったのはそれから数日経った兄たちとの飲み会の席で、ここに連れて来られたのは更に数日過ぎた時だった。
 まさか、輝翔さん自身をプレゼントされることになるとはね……ははは……
 「ああ、あれね」
 私の言葉に輝翔さんはふっと目を細め、それからなにかを思い出すかのように遠い目をした。

*****

 中学生と呼ぶには少々幼すぎる美月に恋愛感情を抱いてからというもの、俺は自分の気持ちと一緒に美月のことも大切に育ててきたつもりだ。
 具体的に言えば、俺や悠一と同じ高校への進学を希望した美月のために、三年間きっちりと家庭教師を果たした。やましい気持ちや邪な感情は封印し、俺に対する警戒心を少しずつ解いていくことを心掛ける。
 言葉にするのは簡単だけど、その間の俺の苦悩も推し量ってもらいたい。高校生という多感な時期に、好意を抱いている相手と、彼女の匂いに満ちた部屋で二人っきりで過ごす時間を何日も積み重ねていく。おまけに美月とくれば、はっきりとした好意を示すことはなくとも、ほんのりと頬を染めながら熱っぽい瞳で見上げてきたりすることは数知れず───
 忍耐力やら精神力やら自制心やら、持てる理性を総動員し続けた三年間。思い返せば、それらは苦行の日々に他ならない。
 「なあ……そろそろいいと思わないか?」
 双方の質の違う努力の甲斐あって、美月は見事に高校に合格し、女性としては法律上婚姻関係が結べる年齢になった。
 美月は十六歳、俺は二十歳。高校生と大学生のカップルであれば、親友が心配するような、世間に白い目で見られる『ロリコン』には該当しないだろう。
 内心浮き足立ちながら、美月の兄である親友の悠一に意見を求めると、奴は一瞬眉間にシワを寄せて、それから呆れた様に溜め息を吐いた。
 「いやいや、十八歳未満に手を出すのは犯罪だろ?いくらお前が親友でも、自分の妹が淫行するのは見過ごすわけにはいかないんだ。なにしろ、親父が黙っていない」
 美月と悠一の父親は、うちの母親の片腕で『社長の懐刀』と呼ばれる敏腕弁護士。法の番人である彼が、娘の不法行為を許したりはしないだろうというのが悠一の見解。
 「淫行って、人の恋路をそういう目で見ないでもらいたいんだけど」
 「じゃあ、なにもしないのか?なーんにも?少しも?これっぽっちも?絶対に?」
 「……無理」
 別にそういうことを目的として美月と一緒にいたいわけでは……なくもない。それに、そこまで厳密に言われたら、全くなにもしないなんていう確約は、できなかった。
 「だったら、もう少し待った方がいい。当事者同士が真摯な交際関係を主張しても、認められないケースだってあるんだ。なにより、美月は未だにお前に対して一歩引いた態度を取っている。まずはそれをどうにかしない限り、お前の気持ちを素直に受け入れたりはできないんじゃないかな?」
 悠一の意見も一理ある。いくら美月の俺に対する気持ちがわかりやすいものとはいえ、美月自身はそれを認めていない。それは多分、俺の立場とか身分とか家柄とか、そういうものに彼女が苦手意識を持っているからだ。
 だけど、それを無理やり取り除くことはしなくない。なぜなら、そういう美月だからこそ、俺は惹かれたのだから。
 こうして、美月が高校生活を満喫する三年間も、兄の親友で優しい先輩という立場を、再びキープすることとなる。

 次に機会が訪れたのは、美月が大学生になった十八歳の時。俺は二十二歳で、須崎グループの関連企業のひとつである須崎商事に就職していた。役就きなしでの入社だが、数年後には専務に昇進し、いずれ母の後を継ぐための基礎を学ぶことになっている。要するに、修行を兼ねた力試し。
 「輝翔くんは就職したばかりだよね…?将来の社長が基盤造りを惜しむのはどうかな?」
 そう言って横やりを入れたのは、噂の敏腕弁護士。美月と交際しても淫行違反にならない年齢がやってきた途端、母の執務室で偶然居合わせた悠介先生に先制パンチをくらった。
 美月に対する気持ちは、本人以外には包み隠さず打ち明けてきた。美月の苦手な格式や家柄をなるべく受け入れやすくするためには、周囲の人間がくだらない選民思想に囚われていないほうがいい。元より母はそういった類の人間ではないが、少しでも美月に安心してもらうための根回しは怠らないようにしていた。
 それはもちろん、彼女の父親である悠介先生に対してもだったけど……
 「えーっ、いいじゃない悠介。輝翔も美月ちゃんもお年頃なんだし、他人の恋路を邪魔する奴には私は黙っちゃいないわよ?それとも、なあに?娘の相手にはうちの息子じゃ不服だって言うの?」
 うちの母親は美月と直接の面識があるわけではないが、彼女の父親は自分の幼なじみで片腕で、母親のことも甚く気に入っていた。なにより俺が一人の女性を長く大切にしているという状況を手放しで喜んでくれている。
 「そんなことは言ってませんよ。輝翔くんがうちの娘に対して真摯に対応してくれていることは心得ています。ですが今は、そんなことをしている場合ではないでしょう?」
 悠介先生は相変わらずのポーカーフェイスで至極冷静な声色だったけれど、若干目が泳いだ気がするのは、見間違えではなかったと思う。
 「輝翔くんの実力を認めていない人間は社内にはまだまだ多い。関連会社とはいえ、年若い君がいずれ役就きになることを快く思わない者もいるだろう。まずは自身の体制をきちんと整えてその地位を確固たるものにしてもらわないと、安心して娘を任せることはできないんですよ」
 悠介先生の意見も一理ある。色恋に溺れて身を滅ぼしては本末転倒。望んで生まれた家ではないが、須崎家の御曹司として生きてきた俺は、今さらそれを誰かに譲るつもりなど毛頭ない。
 だけどそれと同じように、美月を諦めることもしないけどね。
 「わかりました。それでは俺が専務に昇進した暁には、娘さんをくださいね?」
 「そうね。いいわ、それなら文句ないわ」
 「俺の娘の行く末をお前が決めるな!」
 とりあえず、美月の将来について、『親御さん』の了承をもらった。

 それからまた、数年が過ぎた。
 「美月ちゃんの誕生日?」
 学生の頃から行きつけにしているバーのカウンターで、俺の隣に座っているのは、悠一の恋人である柴田沙紀。
 ちなみに、彼女の隣には悠一が座っているが、面倒くさいので早々に酔いつぶれてもらった。
 「そう。美月も社会人になって半年経ったし、俺の専務の仕事も定着してきた。そろそろ本気で攻め込もうと思う」
 「……それで、私はどうすれば?」
 「美月のことだから、突然俺が誕生日のお祝いをするなんて言っても、気後れして断ると思うんだ。だから、セッティングを頼みたい」
 「わかりました。じゃあ、私と悠一さんの婚約祝いを兼ねて、ということにしましょうか」
 大学の入学式で沙紀を見初めた悠一と、そんな悠一に同じく一目ぼれした沙紀。お互いが両想いなのを知りながら、双方の恋愛相談に乗りつつ、恩を売るのを忘れなかった。なんだかんだ言いながら妹を守ろうとする悠一に比べて、今では沙紀が一番の協力者だ。
 「でも、輝翔さんはプレゼントを準備しちゃダメですよ?」
 「どうして?」
 「私と悠一さんが居たんじゃ、お邪魔でしょう?忘れていたフリをして、後日改めて、二人だけでお祝いするようにしてください」
 「……いきなり二人っきりにされたら、俺も自制心が働くか不安なんだけど」
 「あら、そんなもの必要ありませんよ。初めての誕生日プレゼントなんだから、思い切って輝翔さんごとプレゼントしてあげてくださいね?」
 ふふふっ、と含み笑いを浮かべながら、沙紀は楽しそうに瞳を輝かせていた───。

*****

 「あ、輝翔さん?」
 さっきまで昔を懐かしんでいた輝翔さんが、なぜだか今は黒い笑みを浮かべている。
 「ああ……、ごめん。なんかいろいろ思い出してた」
 いろいろ思い出した結果が黒い笑みって、いったいなにを思い出していたんですか……?
 「とにかく、美月に告白するまで、いろいろなことがあったってこと。本当、十年間もよく我慢したと思う」
 「それは……ありがとう、ございます」
 十年間も一途に想い続けてもらったんだから、この場合は素直にお礼でいいんだよね?
 「でも、本当に誕生日プレゼントが食事でよかったの?なにか欲しいものとかなかった?」
 「はい。輝翔さんにはいろいろもらってばかりなので、もう十分です」
 今年の誕生日プレゼントも、お食事会をリクエストした。相変わらず色気より食い気だなんて、思わないでほしい。だって、輝翔さんからはもう十分すぎるくらいプレゼントはもらったもん。
 クリスマスにもらった三日月のネックレスに、ニューヨーク土産のサファイアの指輪。
 これ以上貴金属もらったら、私、成金ババアみたいじゃない!
 例え貴金属じゃなかったとしても、輝翔さんのことだから『十年分の』とか言って、また大量のプレゼントを持ってくることも想定できる。それは流石にご遠慮願いたい。
 それに───
 「輝翔さんと誕生日を過ごせることが、なによりのプレゼントですから」
 「美月……」

 ずっと、手が届かない人だと諦めていた人。そんな人と一緒に過ごせる時間が、私にとっては一番のプレゼント。

 「そういえば、前はこのあとキスしようとして断られたよね?」
 「そ、そうでしたね……」

 憧れの王子様は、これがなかなか執念深い……
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